物流・運送業界のドローン活用事例

物流・運送でのドローン活用例


現在、Amazonなどをはじめとして、物流・運送でドローンの活用を狙う多くの企業があります。

その理由の一つとしては、楽天やAmazonなどのEC業界の発展もあって、宅配便の受け取り個数は年々高まっており、ドライバーの減少・高齢化、再配達の負担などは運送業界の課題となっていることがあげられます。今後もEC業界の発展は予想されますので、荷物を早く正確に効率良く届ける技術は、これからの経済発展にとって大きく貢献するでしょう。

実際にドローンを物流に生かそうとする試みは既にさまざまな場所で始まっていますので、今回は様々な企業の取り組みを紹介していきます。

Amazonのドローン配達

ドローンを使った配達「Prime Air」をいち早く発表して、物流・運送業界でのドローン活用に対する世間の注目を集めたのがAmazonです。「Prime Air」とは、ドローンを使用して30分以内に荷物を安全に届けるAmazonの配送システムで、「Prime Air」は、安全性と効率を向上させる迅速な宅配サービスを提供することにより、すでに多くの人々に提供しているサービスを強化する大きな可能性を秘めています。(Amazon Prime Air – Amazon.com

Amazonでは日々多くの買い物がされており、多くの注文者の手元に1つ1つ商品を届ける必要があります。倉庫や物流センター間の運送に関しては、かなりの効率化ができますが、上でも述べたように消費者への配送は再配達の必要があるなど、コスト負担が多くなってしまいます。ヤマト運輸の値上げなどによって、Amazonはデリバリープロバイダという形で他の運送会社の利用もしていますが、様々なトラブルもあり利用者にとってマイナスになっています。

このような最後に注文者へ届ける部分「ラストワンマイル」を自社のドローンに任せることで、運送コストの大幅削減や、正確な運送が可能になると考えられます。現在アマゾンでは「ラストワンマイル」の配達に8ドルほどかかっていますが、もしドローンによる配達が実用がされたら20セント~1ドル程で配達が可能になるという試算もあります。正確な運送や、運送コストの削減はCS(顧客満足度)向上にも繋がり、Amazon側と消費者側の双方にメリットがあると思います。

ここからは、Amazonのドローン配達計画の進展を時系列で順番に紹介していきます。

2013年「Prime Air」発表

上で説明したような配達の課題解決方法の1つとしてAmazonが計画したのが、ドローンによる配達「Prime Air」でした。初めて発表があったのは2013年12月で、早ければ2015年スタートとされていました。その時にAmazonが公式チャンネルで公開したのが下の動画です。出荷準備から配達まで全て自動でされています。

発表当時は今ほどドローンが一般的なものではなかったこともあって、Amazonの「Prime Air」の実現には懐疑的な意見も多く、株価上昇やイメージアップのためのPR映像との見方もありました。実際に専門家からも、「Prime Air」をFAA(連邦航空局)が規則で禁じられているものの例として挙げるなどしたこともあり、現実性がないとされていました。

2014年 人材のスカウト・募集

周囲の懐疑的な意見に対して、Amazonは翌年の2014年には、NASAやMicrosoftなどから宇宙航空に関するプロフェッショナルを多くスカウトし、また、「Prime Air」のUnmanned Aircraft Systems(UAS)テクノロジーをテストする技術者を募集するなどもして、多くの人材を集めていました。このように、本格的な人材スカウト・募集を行い、Amazonが現実的に「Prime Air」プロジェクトを進めることを明確にしました。

2015年11月「Prime Air」の新機体公開

2015年11月には「Prime Air」のための新しい機体が公開されました。このAmazonドローンは大型化し、ハイブリッド型のドローンとなっていました。ハイブリッド型とは、垂直飛行と水平飛行が両方ともできるということで、移動時は飛行機のように飛び、発着陸時には通常のマルチコプタータイプのドローンと同様に飛ぶことができます。最高時速は55mph(約時速88キロメートル)で、15マイル(約24キロメートル)以内の範囲であれば30分でのドローン配達が可能と発表しました。

また、このドローンには、障害物を探知する能力や、着陸地点を認識する能力があります。動画でも登場しますが、「Delivery Zone」と書かれたカタパルトシートを庭に設置することで、ドローンがそこに着陸し荷物を送り届けてくれます。

この様子もAmazon公式チャンネルで、動画が公開されています。

2015年12月 日本のドローン特区への参入

また12月には、日本でドローンなどの無人航空機の飛行を規制する改正航空法(ドローン法)が施行されました。これとほぼ同じタイミングで、日本政府は航空法で定められた高さなどの規制を緩和する国家戦略特区として、千葉市をドローン特区にするとすると発表しました。これによって、ドローンによる医療用医薬品(処方薬)や生活必需品を宅配できるようになりますが、Amazonがいち早くこの事業への参入を発表しました。

2016年12月「Prime Air」初配達成功

Amazonは2016年イギリスで、スタートは2軒のカスタマーからでしたが、個人へのドローン配送の小規模な検証「プライベートトライアル」を開始したと発表しました。12月7日にはケンブリッジシャー州で初めての配達に成功しました。

初配達の飛行時間は13分で、下のプロモーション動画は、ドローンによる初配達を宣伝するためにAmazonが公開したもので、カスタマーのリチャードさんがタブレットで「Amazon Fire TV Stick」とポップコーンの注文を行い、ドローン専用の配送センターで注文の品が人の手によって箱詰めされ、「Amazon Fire TV Stick」と注文したポップコーンとは箱詰めされ、ドローン下部のボックスの中に格納されます。ドローンはベルトコンベヤーの上を移動したあと、GPS情報をもとに離陸し、リチャードさんの家の庭までの配達に成功しました。

実際の一連の様子は、下に貼っているAmazon公式チャンネルの動画から確認できます。

リチャードさんも到着してすごく満足そうな表情ですね。映像ではありませんでしたが、実用化された際にはPrimeNowのように、到着まで配達中の品物がどこにあるかも確認できるようになると便利ですね。

最初の配達がアメリカではなくイギリスで行われた理由の一つとして、イギリスはアメリカに比べてドローンに対する規制が甘いため、イギリスで先行してテストが行われていたことがあります。日本でもドローンビジネス発展を目指すためには、安全性とのバランスをとる必要はありますが、積極的に法的な規制緩和を検討する必要があるでしょう。ドローン技術の発展はとても早いため柔軟な対応が求められます。

2016年12月 特許取得

Amazonは、「Airborne fulfillment center utilizing unmanned aerial vehicles for item delivery」というタイトルの特許を取得しました。この特許は「空中のフルフィルメントセンターとドローンを組み合わせて利用者に宅配物を届ける」という特許で、上空4.5万フィート(約14キロメートル)を航行する飛行船の配送センターから、ドローンが指定された場所にいる利用者に配達するものです。

ドローンの自律飛行では通過困難な場所を回避することでドローンの事故のリスクを低下させたり、上空からの落下で配達をするので消費電力の節約を行うことが可能となります。配達後は飛行船まで戻るのではなく、一度地上の配達センタまで戻り、商品やバッテリー、燃料などを補充した上で小型飛行船によって飛行船の配送センターに戻ります。実現可能性は分かりませんが、空中の配送センターは実現すると面白い発想だと思います。

 

2017年3月 アメリカでの「Prime Air」初配達

アメリカでの初配達は、2017年の3月でした。Amazonが主催する宇宙航空やロボットなどについてのカンファレンス「MARS 2017」で、ドローンの完全自律飛行によってカンファレンスの参加者に日焼け止めを届けることに成功しました。

アメリカでは商用利用に対する規制があり、一般の人の前で行うこのデモは連邦航空局の協力の下で行われました。やはり、実現に向けての一番の障害は法規制になるのかもしれません。

動画では、白いドローンが「MARS 2017」会場へ飛んできて、設置された指定地点の上に、荷物を置いて去っていきました。そして、注文者の男性がドローンが配達した段ボールを手に取り、会場からは拍手が巻き起こりました。この様子は、youtubeの限定公開でアップされていますので、下の埋め込み動画から確認してみて下さい。

2017年5月 研究施設設置

さらに、以前からプライベートトライアルという形で「Prime Air」による配達の実験が行われていた、イギリスのケンブリッジに研究開発施設を設置しました。

ケンブリッジには、ケンブリッジ・テクノポールと呼ばれるケンブリッジ大学や周辺のハイテク企業群を中核とした地域クラスターがあり、多くのIT企業などが存在し、シリコンバレーと並ぶ世界屈指のサイエンスシティとして知られています。

プライベートトライアルの実施されているケンブリッジに研究施設を設置した点は、イギリスでの「Prime Air」実用化に本腰を入れる決心を見て取ることができそうです。

Amazonがイギリスでのドローン開発に注力する理由は、イギリス政府がドローン配達の実験に協力的だということがあります。イギリスではAmazonなどの民間企業に目視外飛行を許可し、そこで得られたデータからドローンの法規制を効率的なものにする「パスファインダー」プログラムが実施されています。

2018年

2018年はまだ新たな大きな動きは出てきていませんが、これからも「Prime Air」の新しい発表に期待したいです。また大きな動きがあれば追記していきます。

 

楽天のドローン配達

楽天もドローンによる配達についての取り組みを進めており、国内企業として、日本国内でのドローン配達の進展を牽引していくことが期待されます。

楽天が取り組む主なドローン事業は、下の図のように、①新たな利便性の提供、②物流困難者の支援、③緊急時のインフラ構築とされています。

 

2016年3月 楽天がACSLへの出資を発表

楽天は3月に、第三者割当増資の引受と、既存株主である株式会社菊池製作所からの株式取得により、株式会社自律制御システム研究所(ACSL)に出資することを発表しました。

ACSLは、ドローンの研究開発などを手掛ける千葉大学発ベンチャーです。千葉大学野波研究室では1998年からドローン開発・研究を開始し2001年8月に日本で初めて自律制御化に成功し、2013年11月1日に「株式会社自律制御システム研究所」として法人化し、産業利用のできる純国産ドローンでの市場獲得を目指している企業です。

国産のドローン技術で社会に貢献していきます。

私たちが考えるドローンの可能性は無限大です。
お客様のご要望にあったドローンをトータルソリューションとして提案します。

ACSL公式HP

2016年5月 「そら楽」第一弾開始

楽天のドローン配達サービス「そら楽」の第一弾として、千葉県ゴルフ場コース内(キャメルゴルフリゾート 千葉県夷隅郡御宿町上布施3360)でプレイヤーがスマートフォンの専用アプリを使って、軽食や飲み物、ゴルフ用品などを注文すると、ドローンがコース内の受取所まで商品を届けるというサービスを提供しました。

ゴルフ場を第一弾の場所に選んだ理由としては、非人口密集地の私有地で法規制への対策が比較的容易であり、ゴルフプレイヤーをターゲットとすることでユーザーのニーズを特定しやすいという事があるようです。

第一弾のサービス内容は、ゴルフ場コース内でプレイヤーがスマートフォンの専用アプリ(Android版)を使って、ゴルフ用品や軽食、飲み物などを注文すると、専用デポに待機するスタッフが商品を配送用ボックスに梱包し、ドローンの機体に取り付けます。すると、ドローンが自律飛行で飛行し、荷物をコース内の受取所まで商品を届けるサービスを提供します。

「あす楽」で利用されている楽天のドローン「天空」は、楽天が出資したACSLが開発した機体を、楽天が共同で改良・開発をしており、ヘキサコプタータイプで15インチの回転翼を6枚備えているドローンです。機能としては、最大積載量が約2キログラム、飛行可能な距離は約5キロメートルとなっており、GPSと画像認識などを組み合わせることで、指定されたポイントへ安定して配達をすることができます。

「そら楽」第一弾の様子は、楽天公式チャンネルで公開されています。

2017年3月「楽天AirMap」を設立

楽天と、カリフォルニア州にあるAirMap社(公式HP)は、日本国内における商用ドローンの運用者および空域管理者に対し、無人航空機管制システムを提供する合弁会社「楽天AirMap」(公式HP)を設立しました。

楽天AirMapは、自治体や大学といった広大な土地を所有する組織や個人がその空域を管理するためのシステム「空域管理ダッシュボード」や、飛行可能エリアの確認や飛行申請、天候の確認など、ドローンを飛行させるために必要な情報をワンストップで入手できる「ドローン操縦者向けアプリAirMap」を提供しています。

「空域管理ダッシュボード」や「ドローン操縦者向けアプリAirMap」の主な機能などは、下で紹介している公式動画で紹介されています。

2017年10月 福島県でのドローン配送サービス開始

楽天は、ローソンと協業し、2017年10月31日より「ローソン南相馬小高店」を拠点に、週1回限定ですが、注文された商品を指定の受取場所へ、楽天のドローンが商品を配達するというものです。

福島県南相馬市小高区は、東京電力福島第一原発事故の影響による避難指示区域の指定が、2016年7月に解除されました。避難を余儀なくされていた住民の帰還が進み、町としての活気を取り戻し始めているものの、日用品や食品など買い物環境の向上は優先すべき課題となっています。そんな状況で「ローソン南相馬小高店」は、2016年10月にオープンし、避難指示区域の指定解除以降小高区内で最初に営業を再開したコンビニエンスストアとなっています。

被災者への配達サービスの実施は、将来の「物流困難者の支援」「緊急時のインフラ構築」という面で価値があることだと思います。

千葉市での実証実験

国家戦略特区に選ばれた千葉市では「ドローンによる宅配サービス・セキュリティ」に関するプロジェクトを進めており、実際にサービスを事業化するために航空法の規制を緩和するなどして、ドローンを活用した様々な宅配サービス等をできるような法整備を進めるため、様々なテストが行われています。

千葉市には、東京圏国家戦略特別区域会議の下に「千葉市ドローン宅配等分科会」が設置されており、千葉市、内閣府に加え、イオンリテール株式会社や楽天株式会社、NTTドコモ株式会社など民間企業も加わって組織されており、行政と民間企業が協力してドローン宅配サービスの実証実験が行われています。また、実証実験の具体的プロジェクトを実施するとともに、実証実験に係る技術的課題を抽出し分科会に報告することを目的として、「千葉市ドローン宅配等分科会」の下に、民間事業者を中心とした「技術検討会」が設置されています。

2016年4月の実証実験

千葉市で行われた4月11日の実証実験では、都市部初となる2つのドローンによる配達が行われました。

一つはイオンモール幕張新都心の屋上(高さ23.4メートル)から、約150メートル離れた豊砂公園へワインボトル(720ミリリットル)を届けるというものでした。利用されたのは六枚羽の黒いドローンで、AEONのロゴの入ったカゴに赤ワインのボトルをいれて屋上の駐車場から、下の公園まで無事に届けることができました。

実証実験の様子は、下の千葉市公式youtubeで確認することができます。

もう一つは、高さ31.2メートルの高層マンション「ミラマール」の屋上へ、約120メートル離れた公園から市販薬を届けるというのでした。イオンモールでの実証実験と同様のドローンが用いられ、これも無事に配達に成功しました。

簡単なミッションとの意見もありますが、こうした実証実験の積み重ねによって、法整備なども含めてドローンの早期実用化の実現に近づいていくと思われます。

2016年11月の実証実験

11月の実証実験は、アプリによる商品注文後、商品をドローンに積み、稲毛海浜公園のいなげの浜から海上を通るルートを約700メートル飛行して荷物を配達するというものでした。

この実証実験は、千葉市、楽天株式会社、株式会社NTTドコモ、及び株式会社自律制御システム研究所が共同で、楽天のドローン「天空」を利用して行いました。将来的なドローンを活用した長距離配送を見据えたもので、海上飛行が可能かどうかや、スマートフォンアプリを利用した注文がドローンを用いた配送システムへ正常に反映されること、そして携帯電話のLTEネットワークによる遠隔制御が安定的に行えることや、墜落時の落下速度を抑えるためのパラシュートの動作を確認しました。

楽天の公式youtubeで実証実験での飛行を確認できます。

「物流・運送業界のドローン活用事例」まとめ

最後にここまでで紹介したドローン活用例を簡単にまとめます。

なお、ドローンを使った運送についての計画や実験は、ここで紹介したもの以外にも世界中で実施されていますので、ここで紹介している計画や実験について新しいニュースなどがあればここに追加したり、また他の企業なども適宜追加をしていきます。

 

Summary

 

  1. Amazon→「Prime Air」というドローン配達サービスを計画しており、2013年に発表、2016年に初配達に成功しています。
  2. 楽天→「そら楽」サービスなどを立ち上げ、2016年に千葉県のゴルフ場で、2017年には福島第一原発事故の被災地でサービス提供を行いました。
  3. 千葉市→ 国家戦略特区に選ばれた千葉市では、官民が協力してのドローン配達実証実験が行われています。